「お母さん、サポートしてくれてありがとう」
先日、コンクールで奨励賞を受賞した生徒ちゃん(小3)のお母さまが「こんなうれしいことがありました」と、お話してくださいました。
奨励賞を受賞してから数日後のある晩、お子さんが寝る前にこう言ったんだそうです。
「お母さん、サポートしてくれてありがとう」
お子さんから、ピアノのことでそのような感謝の言葉をもらったのがはじめてだったそうで、お母さんもとってもうれしかったそうです。
私から見ても、自分の気持ちを素直に言えない生徒ちゃんなんですね。
そんな子が、きちんとお母さんにありがとうを言えたことに、私自身もじ〜んとうれしくなりました。
もうピアノやめる!
ちなみに、コンクール前は課題曲が思うように弾けず(お家で)ふて腐れて「もうピアノやめる!」と言っていたみたいなんですね。
たしかに、ときおり教室でも言葉には出さなくても気持ちが表情に出ていました。
なので、私もたまに「そんな気持ちで弾いててもうまくならないよ、気持ち切り替えないとね」なんて言葉をかけたりもしていました。
それでも気持ちが切り替わらないときには「ピアノ辞めるの?、私は引き留めないから自分で決めてね」なんて言うことも。
だけど、彼女はがんばり抜きました。
コンクール出場で得られるものとは?
私は、つねづね保護者の方に教室だより・ブログ・LINEなどでお伝えしていることがあります。
それは、コンクールに出場することは入賞すること以上に得られるものがあるということです。
もちろん、入賞してくれたらうれしいですけれど、そもそも入賞する人数はかぎられていますので、どうしても入賞できないお子さんのほうが多くなります。
ですので、入賞以上に学べることが多いということを理解していただいたうえで、コンクールには出場してもらっています。
そして、私が強調してお伝えしているのは「どっちに転がっても、お子さんは必ず成長しますよ」ということです。
そのひとつが「音楽ができることへの感謝の気持ちが育つ」ということなんですね。
お母さんはコーチ
私は、生徒たちには「コンクールに出たりできるのは、家族のおかげなんだよ」ということを伝えるようにしています。
とりわけ、レッスン中に保護者の方がいらっしゃる前で言うようにしています。
なぜなら、お家で保護者の方の言うことに耳を傾け、レッスンをしてもらいたいからです。
ピアノにかぎらず、親が子どもに口出しをしてケンカになってしまうことは少なくありません。
だからこそ、私は生徒にこう伝えています。
「お母さんをコーチだと思ってね。私は、週に1回あなたの音を聴くだけだけど、お母さんは一番あなたの音を聴いてるんだよ。うれしそうな音も、イヤな音全部聞いているんだよ。あなたの音を聴けば、お母さんはあなたの調子が全部わかるのよ。だから、お母さんの言うことは聞かないとね」
もちろん、それに対して後で家でどんなに反論しているかはわかりません(苦笑)。
でも、その場では私が伝えたことを聞き入れてくれてはいます。
いずれにしても、子どもたちには今ある環境が、決して“当たり前ではない”ことを理解しておいてほしいと思うんですね。
ありがとうを口にできなくてもいい
必ずしも「ありがとう」と口に出して言えなくても構いません。
中学生くらいになると、照れ臭くて言えないものですよね。
なので、生徒には「心で(ありがとう)言えばいいよ」と伝えています(※なるべく照れのない小さいときに、言えるといいですね)
コンクールの結果は、運にも左右されます。
他の出場者、演奏順、さらには審査員といった要因も、結果には大きな影響を及ぼします。
だから、結果が出ればうれしいですが、結果が出ないとしても音楽ができて感謝ができる心が育つ機会になってほしいと願いながら、生徒たちを送り出しています。
そういう観点からも、コンクールは子どもたちにとって大切な経験だなと思う次第です。