ピアノ教室の先生から、子供さん(幼児〜小学生)のレッスンついてこんなお悩みの声を耳にすることがあります。
- 子供さんが、先生の顔見て話すのではなくママのほうを見て答えを求める
- 先生が子供さんにアドバイスをしても「ママがこう弾きなさいって言った」と反論される
- 何歳までママを頼らせてあげるべきか?
- とは言え、ママが少々口うるさくなってしまっているようで子供さんがピアノを嫌がりはじめている…
- そのことを、ママにどういう風に伝えればいいのかわからない… etc
子供さんの上達には、やはり保護者の方(特にママ)の協力は欠かせません。
しかし、どのくらい・どのように協力を仰ぐべきか?は、悩むところです。
なぜなら、子供さんの年代によって関わり方が変わるからです。
そこで以下に、幼児から小学生までの年代別のピアノレッスンのポイントと保護者の方の関わり方をまとめました。
幼児・導入期(3〜6歳)のレッスンのポイント
この年代のポイントは、ママと先生が一緒に子供さんの「ピアノ大好き!」を育ててあげることです。
幼児(3歳〜6歳)は、自分がピアノを弾くのをママに見ていてもらいたい、聞いてもらいたい年代です。
自分が弾くピアノのそばに一緒にいて、ピアノが弾けることをよろこんでほしいと思っています。
ですので、レッスンにはなるべくママにも来ていただいて子供さんが弾くピアノを楽しんでいる姿を見せてあげてほしいと思います。
そして先生のほうでも「すごいね」、「上手に弾けたね」、「また聞かせてね」といった声かけを、子供さんにしてあげてほしいと思います。
また、お家で練習するには、ママに「すごいね」、「上手に弾けたね」、「また聞かせてね」と声かけしていただくようにお願いしてみるのもよいでしょう。
寄り添い、見守り、よろこんであげる
ただし、ママが練習に付き添ってあげることは大切ですが、ママが厳しく言いすぎるのは避けるべきです。
それが原因で、子供さんがピアノを嫌になることがあるからです。
大切なのは、子供さんを見守ること。
一緒によろこぶこと。
ちなみに、小さいときにピアノを習っておられたママほど、つい子供さんに口うるさくなってしまう傾向があります。
そのつど、間違いを指摘するほうが、ミスをしなくなり一見すると伸びが早いように思います。
ですが、そういう子供さんはつぎの課題曲に進むと以前の曲が弾けなくなったり、楽譜が読めなくなっていたりすることが少なくありません。
逆に、ピアノをやってらっしゃらなかったママほど、子供さんが指を一本ずつ動かせるようになっただけでも「すごーい!」とよろこばれる傾向があります。
そして、そのようなママはお家でもお子さんを褒めてよろこんであげていることが多いように思います。
ピアノが楽しい!
とりわけ幼児期には「ピアノを弾くことが楽しい!」と感じさせてあげましょう。
そして、この年代で「ピアノが楽しい!」という気持ちが芽生えていれば、だんだんと自分の意志でピアノの練習をがんばれるようにもなります。
練習では、間違ってもいいですし、そのままでレッスンに来られても構いません。
でも、レッスンでは「どこが間違ったのか?、なぜ間違ったのか?、ではどうすればいいのか?」といったことを、子供さん本人に気づかせてあげてください。
子供さんが自分で気づけることが、本当の意味での上達になります。
そのために指導者は、気長に待つことが指導力のひとつとも言えます(教えすぎることは、上達の妨げになってしまいかねません。)
そして、子供さんの「ピアノ大好き!」の気持ちを“ママと先生が一緒に”育ててあげられるよう協力をお願いしましょう。
小学校1〜4年生のレッスンのポイント
この年代のポイントは「プチごほうび」です。
少しずつ、コンクールや上達といった目に見えた成果も求められるようになってきます。
そのためには、当然コツコツと練習を継続することが大切です。
また、幼児期に比べると、少しずつママの関わり方が少しずつ減ってくる時期でもあります。
とは言え、小学校低学年くらいの子供さんはまだ幼さが残っています。
ですので、モチベーションがつづかなかったり、ママに見ていてほしい、ぎゅーしてもらいたいが残っている時期でもあります。
そこで、ピアノの練習のたびに「プチごほうび」をあげるようにします。
具体的に私のレッスンでは「ごほうびシール」を貼ってあげています。
こちらが、課題を示して「それがクリアできたらシールを貼ろうね」と言っています。
このとき、課題を具体的に示すこともポイントです。
「ここから〜小節目まで、こんな風に弾けるようになったらシール貼っていいよ」
「今日習った新しいところから、おうちで練習してね」
「左手の練習の回数を右手よりも多くしてね、そうしたらシール貼ろうね」
また、レッスン終わりのハンバーガーを楽しみにしている子供さんもいますし、コンクールに出場したときに、ご当地ラーメンを食べたり、遊園地で遊んで帰るといった“ごほうび”を楽しみにしている子供さんもいます。
「コンクールよりも、ごほうびに意識が向いてしまっていいの?」と思われるかもしれません。
けれど私の観察では、そのくらいの気持ちで出場しているお子さんのほうが、結果がよかったり、結果に一喜一憂しないですし、めげない傾向があります。
プチごほうびを楽しみにレッスンもがんばるので、結果的に上達するんですね。
そのくらいの“気楽さ”もピアノ上達には必要ではないかと、私は考えています。
小学校5〜6年生のレッスンのポイント
この年代のポイントは「読譜力」です。
学校で、伴奏を任されることも多くなる年代です。
まわりのお友だちや先生から認められることがうれしくて、ガゼンはりきってがんばる子供さんは多いですね。
学校によっては「最優秀伴奏者賞」などもあるそうです。
こういった機会での成功体験が、子供さんのピアノへのモチベーションのみならず、物事をコツコツと一生懸命取り組む力を大きく育ててくれます。
ですので、先生もできるかぎりバックアップしてあげてほしいと思います。
しかし、伴奏者になるためにはオーディションもあるようですし、学校やクラスによっては楽譜を1週間前や3日前に渡されるケースなどもあるそうなんですね。
そのような短期間で伴奏ができるようになるには「読譜力」が必要です。
ちなみに、私のところに生徒ちゃんから音楽会の前日になって、楽譜と一緒に動画が送られてくることもあります。
そのときには、できるかぎり対応していますが、あまりにも短期間では教室に来ることや先生に相談することにも限界があります。
つまり、自分で弾けるようにならなければいけませんよね。
そのときには、やはり楽譜が読めてリズムがわかって、記号が自分でわかる必要があります。
自分の好きな曲を弾こう!
また、小学校高学年になってくると、自分の好きな曲を弾けるようになるよろこびに目覚めはじめる子供さんが少なくありません。
そして、そのようなよろこびに目覚めると、子供さんは中学・高校までレッスンに通いつづけるようになります。
そこで私は、教材の課題曲とは別に、自分の好きな曲をレッスンの中で弾かせてあげるようにしています。
それは例えば、YouTuberの方が弾いていた楽曲の場合もありますし、クラシックの場合もありますし、テレビアニメの主題歌の場合もあります。
いずれにしても、教材よりもはるかに難易度が高いものも多いんですね。
そして、それくらいの難易度になると「耳コピ」だけでは弾けません(耳コピだけで弾けるのは、バイエルレベルの曲まで)。
つまり、自分の好きな曲を弾くためには、イヤでも楽譜を読むクセがついてきて、次第に「読譜力」が高まってきます。
そして、お家で好きな曲を弾いていると、兄弟たちも知っている曲だったりするのでよろこばれることも多く、それもさらなるモチベーションにもなっているようです。
また他方、塾や他の習いごとが増えてくるのでピアノの練習時間が取りづらくなってくるのもこの年代の特徴です。
それらを踏まえて、小学校高学年までに読譜できることをめざすようにしましょう。
好きな曲弾けるって楽しいよね
ちなみに補足ですが、私はこの年代の子供さんに自分の好きな曲が弾ける楽しさを感じてもらうように、以下のようなことを伝えることがあります。
好きな曲弾けるって楽しいよね。そのために、楽譜が読めてリズムがわかって、記号が自分でわかると自分一人でも、大人になってもピアノを楽しめるでしょ。
ずっと、ピアノに通いつづけてくれたら私もうれしいけれど、大人になっても通いつづけられないでしょ?せっかくピアノを習ってるんだから、辞めたらピアノ弾けなくなったら悲しいじゃない?
でも、自分が弾きたいときに、耳コピだけじゃなくて楽譜が読めたりテクニックがちゃんとしていたら弾けるよね?そのために今、こういう教材をやっているんだよ。
実は、このように説明をすると、教材の必要性を理解してレッスンするようにもなるんですね。
参考:中学生以降のレッスンのポイント
中学生以降は、部活や勉強が忙しくて十分な練習ができない子供さんも少なくありません。
それを理由に、小学校卒業とともにピアノのレッスンも卒業される子供さんもいらっしゃるかと思います。
しかし、私のピアノスクールにかぎって言えば、中学生以降もピアノをつづけてくれている子供さんには2つ理由があると考えます。
- 「ピアノ大好き!」という気持ちが根づいていること
- 自分の好きな曲が弾けること
私は、この年代の子供さんには教材があまり進まなくても怒ったりはしません。
また、教材とは別に自分が弾きたい好きな曲を持って来てもらっています。
中には、自分で作曲したものを持ってくる子供さんもいます。
テスト期間中などは、好きな曲のレッスンだけになることもしばしばです。
いずれにしても「時間がかかっても必ず仕上げようね」と伝えています。
なぜならそれが、心の拠り所になるからです。
部活や受験勉強の気分転換に、ピアノを弾いていると子供さん本人や保護者の方から耳にすることが多いんですね。
ちなみに、自分の好きな曲を弾かせてあげるようにすると、子供さん自身が教材の課題曲も進めないといけないと思うようです。
そのため、私から「教材のレッスンをしなさい」と言わなくても子供さんから教材のレッスンを申し出てくるようになります。
また、中高生くらいで好きな曲が弾ける子供さんは、かなりのスキルがあるので中学以降でも学校での伴奏を任されることが少なくありません。
子供さんの年代別レッスンのまとめ
以上のように、年代別にレッスンのポイントはあるものの、それらはずべてつながっていることがおわかりかと思います。
ただ、どの年代にも共通していることは「ピアノ大好き!」という気持ちを育んであげることです。
子供さんが、ピアノをはじめる時期は個人差があります。
けれど、どのタイミングではじめても、どれだけピアノをつづけても、いつでも根底に「ピアノ大好き!」という想いがあれば、子供さんはピアノに向き合いつづけてくれます。
そして、大人になってもピアノのある人生を送ってくれます。
そのうえで、それぞれの年代の特性を踏まえて、楽しさと上達を両立するレッスンを提供してあげてほしいと思います。